朝ドラ「ひよっこ」第9週 第53回レビュー

小さな星の、小さな光5

今日の物語

夕方、向島電機、工場

豊子は鍵をかけて工場にこもってしまいました。

みね子たちは、工場と廊下を仕切っている室内窓越しに豊子を見つめます。

中の異変に気付いた業者(工場の機械を運搬するために来ている)や他の工員たちがざわめきだし、コックの和夫も心配そうに外に出てきました。

愛子はみね子たちに駆け寄ります。

愛子「どうしたの?」

幸子「中に豊子が…!」

愛子は部屋をのぞきます。

いらだち出した業者たちが、工場の玄関におしかけます。

松下「ちょ…ちょっと待って!お願いします」

業者「こっちも仕事でやってんだよ!何時までに運ぶっていうな」

松下「分かってます!ちょっとだけ待って下さい!」

松下は業者に頭を下げます。

幸子「豊子、どうしたの?開けて」

愛子「豊子ちゃん、どうしたの?突然。愛子さんと話そう?ね?」

豊子「…」

愛子「開けて、出ておいで?」

みね子「豊子、どうしたのよ、あんた」

時子「豊子、お願い、開けて」

豊子は小さく首を振り続けます。

幸子「豊子、開けて。こんなことしたって…」

豊子「分かってる…!分かってるよ、幸子さん…!こんなことしたって…何にもならねえってのは分かってる…!わかってるんじゃ!」

玄関で頭を下げ続けている松下にも、豊子の声が聞こえます。

幸子「じゃあ、どうして…」

豊子「…しゃべりたいんだよ…、嫌だってしゃべりたいんだよ…!誰にかは分からねえけど…。おれは嫌だ……。みんなと一緒に働きてえ…。そうやってしゃべりてえんだよ…!」

みね子たち「……」

豊子「おれは今まで、一度だって嫌だって言ったことはねえ…。高校さ行けねぇって両親から言われた時も、悔しかったし…悲しかったし…なんで…なんで おればっかりって思ったけんど……でも嫌だとは言わなかった…。分かったって言った。でも…嫌だ。これは嫌だ。意味がないかもしれない。バカだって思うかもしれない。時間の無駄だと思うかもしれない。でも、おらは嫌だって言いたい…!こったの嫌だ…!!」

業者にも豊子の叫びが聞こえています。

松下・業者「……」

豊子「最初は心ば開けねかったけど、時子さんがさ…「もういいでしょ」って…。「もう意地はらなくていいでしょ」って…。嬉しかったんだ…おら…。嬉しかったんだ……」

時子「豊子……」

豊子「ここは、おらが本当の自分でいられる所なんだ…。今までそったな所はねえ…。だから、この工場で、乙女寮で、仲間たちで、一緒に笑って、一緒に泣いて…、一緒に悩んでくれて…。そんなの初めてだったんだ…。初めてだったのに…!!!…なして…なして…?なして、みんなと一緒にいちゃいけねえの…?なして、ここで働いてはいけねえの…?なして……」

豊子は涙をぽろぽろとこぼします。

みね子たちも、豊子の心の叫びに涙が溢れます。

豊子「何言ってんだか…自分でも分かんねえよ…。…バカだと思うじゃ…、バカでいいじゃ…!」

豊子は座り込んで泣き続けます。

愛子「…分かった…!分かったよ、豊子…!」

豊子「……」

業者「悪いけどな、もう時間だ…。開けないんだったら、ドアを壊しても運ばせてもらうよ」

松下「ちょっと待ってくれと言ってんだ…!!!」

無理やり入ろうとする業者を、松下は身を挺して制します。

松下「あなたたちだって、あの子と同じように働く人間だろ…!!分からないか、あの子の気持ちが…!…中学出たばっかりの女の子…。たった一人で親元離れて、初めての職場なんだ。なくなるのが嫌だっていう気持ち、あんただって分かるだろ…!」

業者「そう言われてもな…、困るんだよ…。俺たちだって、そんなことしたかねえよ…!でも、それが仕事なんだよ…!」

松下は、涙を流し、再び深く深く頭を下げます。

愛子「…大丈夫、豊子ちゃんは自分で出てきます。…大丈夫…」

松下「……」

愛子「豊子ちゃん。壊されちゃうよ…。みんなで毎日通ったこの扉…。そんなの嫌でしょう…?」

豊子「………」

みね子「…豊子。…私だって嫌だよ…。大好きだったから、そこが…。自分の席に座って、仕事するのが大好きだった…。最初は全然できなかったけど…、でも頑張って、負けなかった場所だからさ…。でもね、豊子…。悲しいけど、なくなんないよ…。なくなんない。私たちがずっと忘れないでいれば、工場はなくなんない…!ずっと…!ずっと、なくなったりしないよ。そうでしょ?豊子」

豊子「……」

みね子「それにさ、私たち、決めたでしょ?最後まで笑っていようって。それが私たちらしいねって。約束したでしょう?違う?豊子…!」

業者「悪いけど、もう勘弁してくれ…!」

タイムリミットがせまり、何人もの業者が松下を押しのけて中に無理やり入ろうとします。

松下は、必死にそれを食い止めます。

業者「もう時間なんだよ!」「わかるけど、わかるけど……!」

豊子はその様子を見て、立ち上がります。

自分から鍵を開け、扉を開きました。

豊子が扉を開けた瞬間、そこにいた澄子が豊子を思いっきり抱きしめました。

澄子「このバカ~!このバカが~…!!」

澄子も大泣きしています。

豊子「バカにバカって言われたくねえ…!」

澄子「おれがバカなら、おめえは大バカだ…!!」

豊子「…んだな……」

澄子「バカ…!」

時子も豊子を抱きしめます。

そんな乙女たちを、さっきまで無理にでも押し入ろうとしていた業者たちも足を止めて見つめます。

心配して外まで見に来ていたコックの和夫は、安堵して寮に入っていきました。

愛子「やれやれ…豊子ちゃんも、世話が焼ける子だったんだねぇ」

愛子は豊子の頬をポンポンとやさしくなでます。

豊子「すいません…」

みね子は涙目で笑い、豊子をポンっと叩いて「こら!」と叱ります。

豊子「いてえ!」

みね子「ふふ、いい音したねえ、今」

澄子もみね子の真似をします。

豊子「何すんだ、おめえ」

そして、機械の運搬が始まりました。

みね子の心『お父さん。豊子の小さな反乱は、時間にしたらほんの何分かのことで、歴史に残るようなことではないのかもしれないけど、確かに、今ここで起きた事件です。

私の歴史年表では、とても大きな出来事になると思います。いつか、みんなで笑い話にしてやろうと。何度でも笑い話にしてやろうと思いました』

夕方、向島電機の敷地内

工場から運び出された機械が、手際よくトラックに積み込まれます。

みね子たち工員全員と、愛子、松下は静かにそれを見つめます。

業者「…じゃあ…」

愛子「ご苦労様です。よろしくお願いします」

愛子は努めて明るく言いました。

松下「よろしくお願いします…!」

工員「よろしくお願いします!」

一同が頭を下げる中、時子だけ頭を下げません。

時子「…すいませんでした…!」

時子はそう言って頭を下げ、豊子はもう一度 時子と一緒に頭を下げます。

業者は帽子をとり、軽く会釈します。

その どこか切なそうな顔は、豊子や松下…向島電機全員の思いをよく分かってくれている顔でした。

業者「…じゃあ、行こう…」

業者のトラックが去っていきました。

みね子たち一同は、深く頭を下げて見送ります。

愛子「……さ、おなかすいたね。和夫さんのご飯食べに帰ろう。今日は最後だから、カレーライスだよ!通いの子も、特別に入っていいって!さ!行こう♪」

乙女たち「はい!」

愛子やみね子たちが寮へ向かう後姿に向かって、松下は深く頭を下げて別れます。

夕方、乙女寮

みね子たちは、それぞれ明るい顔でカレーを食べます。

澄子は今日もたっぷりおかわりをしました。

みね子の心『お父さん。お父さんへの心の手紙では、どうしても私の近くにいる人の話になってしまうけど、ここには大勢の乙女たちがいました。みんな それぞれに、私とおんなじように物語があります。なんだか、それってすごいなあって思います。そんな物語が、ものすっごく沢山あるのが、東京なのかなって…思いました…。』

つづく

今日のあさイチ受け

今日は、ゲストが吉田鋼太郎さんでした。

朝ドラにも出演された俳優さんなので、そちらの話題になってしまい、受けはありませんでした。

今日の感想

きょ、きょうのはあかん…!!!きょうのは大泣きも大泣き!号泣中の号泣でした!

どうにもならないと分かっていても、無くなるのが嫌だって叫ぶ豊子の気持ちが本当に切なかった。なんとかしてあげたかったです…。

向島電機がなくなるって決まってから、みね子たちも愛子さんも松下さんも、誰もこんな風に声をあげることができなかったんですよね…。

みんな、大人だったり、言っても仕方ないって分かって控えたり…。

豊子だけがこうして声をあげてくれました。

なくなることは、仕方ない。どうしようもない。それは視聴者も豊子もみね子たちも皆 分かっています。

だけど、こうして豊子が声をあげてくれて、皆で正直に大泣きして…。

どこかそれでふっきれたというか、こんな思いを皆が抱えてるけど、それでも進むんだということに納得できたような気持ちになれた気がします。

何も言わないまま、「泣かないでいようね」って決めてきれいに別れていく…というより、とてもとても心に響く展開でした。

子供みたいな豊子が素直で愛しかったです。

で、豊子が愛しくて抱きしめたい気持ちだったけど、その後、豊子に抱き付いた澄子もすっごくかわいくて、豊子のお姉さんのような時子もかっこよくて、みね子もかわいくて、結局 みんなのことが愛しくて、本当にこのドラマに出てくる乙女たちは全員がかわいくてかわいくてどうしようもないなって思いました。

最後まで、みんなで支え合ってきた9カ月でしたね。

愛子さんの「豊子ちゃんも、世話が焼ける子だったんだねぇ」にも大泣き。

そして、何よりまたまた泣かされたのは松下さん…!

昨日で松下さんの主な出番は終わりかと思っていましたが、今日もまた松下さんに泣かされました。

特に「…中学出たばっかりの女の子…。たった一人で親元離れて、初めての職場なんだ。なくなるのが嫌だっていう気持ち、あんただって分かるだろ…!」っていうところ…。更に涙があふれました。

ずっと乙女ちゃんたちを見てきた松下さんや愛子さんは、親心に近い気持ちもあると思うんです。そんな松下さんの優しい愛情がたまりませんでした。

それに、自分の気持ちを豊子が代弁しているようなところもあったと思います。

松下さん…自分の仕事もなくなって大変だろうに、みね子たちを心から大事に思ってくれて本当にありがとうございました。

松下さん役の俳優さんって、有名な方ですか?すごくいい演技されますよね…。

昨日 考えてたんですけど、松下さんの背景って知らないじゃないですか。上から何をどんな口調でいつ言われたのかもハッキリは分からないし、そのあたりは松下さんを見て推し量るしかしていないわけなんですけど、松下さんがどんな思いなのかっていうのをすごく感じ取れている気がしています。それって、脚本の良さや役者さんの演技力の賜物ですよね。登場回数も多くない松下さんの気持ちがここまで伝わってくるってすごいなって思います。

できれば再登場していただきたい。

この先 みね子たちがどんな人生を歩むのかまだ分からないけど、松下さんと奥茨城の田神先生にはいつか「みね子たちはこんなに元気ですよ」っていうのを伝えられる日が来てくれたらいいなって思います。

ちなみに、松下さんを好きになりすぎた結果、昨日の寝言で「ご安全に~」と叫んでしまいました…笑。

あと、業者さんも良かったですね。

予告で、業者さんが工場に無理やり入ろうとしている映像を見た時には、ついに「悪者(笑)」がひよっこにも登場するのかと思いましたが、ここも「優しい人たち」でしたね…。

「わかるけど…!わかるけど…!」と言っている苦しそうな顔や、最後の帽子を脱いで軽くうなずくシーンは、かなり泣かせてくれました。

くっそ~…ポっと出の業者にまで泣かされるとは…!

みね子の最後の心の声も良かったですね。

みんなに物語があるんですよね。それが人生ですよね。

みんな、豊子やみね子や松下さんや愛子さんのような思いを抱えながら、それでも今日は笑ってカレーライスを食べていたんですよね。

豊子の変(笑)で、大泣きしてくれたおかげですこしすっきりした気もしますが、やっぱり「本当に、なんでこのまま働けないんだろう」って、すごくすごく切ないです。

16、19歳くらいの乙女ちゃんたちが、なんでこんな思いをしなきゃいけないんだろう。

つらいです。

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コメント

  1. るんるん より:

    朝から泣かされる回でしたね。登場回数多くなくても心の中が分かる、丁寧な描写の場面も多くて。愛子さんと松下さん、最初は微妙な関係なのかなと思ったけど(笑)、長きにわたる戦友?みたいなもんだったんでしょうね。あと、食堂の和夫さんも。
    主題歌の歌詞に、サナギが蝶になって、みたいなのがあったと思いますけど、田舎にいた頃は卵か幼虫?で、東京に来てちょっと大人になってサナギになり、向島電機を巣立って蝶になる?って感じなんでしょうか。みね子だけじゃなく、豊子や澄子、それぞれの成長も感じられるのがいいですね。

  2. いそまる より:

    るんるんさん
    泣かされる回でした!
    そうそう、愛子さんと松下さんの関係、はじめは微妙なのかなって思いました。
    戦友…その通りかもしれません。和夫さんは更にエピソードや言葉数が少なかったですが、みね子たちをおいしいご飯で支えてくれましたね。
    サナギが蝶になる…は、そういうイメージも込められているんだろうなって私も思います。
    みんな それぞれ、きれいな蝶になってほしいですね。